ブログを執筆していたのにツイッターを開いている
フォロワーさんがこのようなツイートをしていました。
わかる~~!
めちゃくちゃわかりますよね、人類の皆さん。
この現象を説明するモデルが一つあります。これを使うと「作業が捗らず、ツイッターに手が伸びてしまう理由」「面倒なタスクが続かず、掃除をしてしまう理由」が全てわかります。
解決策も一応示しているので、ぜひ最後まで読んでください。

ブロガーを悩ませる「ツイッター病」
ブロガーの多くは、自分でも気付かないうちに画面がツイッターに切り替わっていることがあります。それもよくあります。
上のようなツイートを2日に1回見るぐらいには。
本当に、時間がCtrl+V(Macの方はCommand+X)で切り取られたかのように、全身麻酔を食らったかのように、いつの間にかツイッターが開かれている。
この現象を一般人に例えると、以下のようになります。
- 英単語を暗記しようと思ったら掃除を始めていた
- 友達の家にテスト対策をしに行ったのにスマブラ(ゲーム)をしていた
- 選手宣誓していたら挙げた手に雷が落ちた
最後のだけ小梅太夫のです。すみません。
巷(後片付け苦手界隈)では、自分が苦手とするタスクの前に掃除を始めることで部屋を綺麗にするライフハックさえあります。私もよくやってますが、そのうち掃除が「苦手なタスク」の中に組み込まれるようになって掃除しなくなりました。それじゃあ駄目じゃん。
人間の「意志」には限界があり、一日の体調に応じて割り振られる
これを説明する概念に「意志力」(Will Power)があります。おそらく某メンタリスト氏の書籍などを読む人にとっては当たり前ですが、手短に説明しておきます。
意志力はお小遣いみたいなもので、一日を始める前に全員に渡されます。そして何かをすると減ったり回復したりします。これがゼロになるとその日は何もできなくなります。

何をするにもこの意志力が必要ですが、特に以下の行為をするときに多くの意志力を使います。
- 重要な決断
- 苦手なこと
- 煩雑なタスク
こんな概念本当にあるんか、と疑う人もいるでしょう。一番上の「決断」について、いくつかの実験が意志力の存在を示唆しています。
裁判官の決断疲れと意志力
裁判官が陥っている現象に「決断疲れ」があります。これは「重要な決断を行う人間が、決断を繰り返すにつれてその質を下げていくこと」と説明されます。
裁判官に関する調査で、休憩を取ることで好意的な判決の割合が元に戻る(休憩を取らないと決断に疲れてしまう)ことがこちらの論文によって示されました。
好意的な判決の割合は、朝いちばんの開廷が65%とすると0%に落ちるものの、休憩を取るとその割合が戻りました(下の図)。

レジ前に置いてあるお菓子と決断疲れ
スーパーのレジ前には美味しそうなお菓子、チョコレートなどが所狭しと並んでいます。そんなとこにお菓子を置くのは、手に取りやすい以外の理由があったりします。それがまた決断疲れです。
スーパーでは「どちらの品物が安いだろう」「これは買うべきだろうか」など、無意識にたくさんの決断を行います。
ある実験では決断疲れの質を回復させるために糖質、つまり甘いものが必要であると示されました。この実験の詳細は社会心理学者Baumeister氏の書籍「Willpower: Rediscovering the Greatest Human Strength (English Edition)」にあります。
日本語版もあるのでぜひ手に取ってみてください。彼による、非常に興味深い実験の数々が紹介されています。

たくさんの選択を迫られた後にお菓子を見ると「疲れを回復させたい…」と無意識に思って手に取ってもらえるということです。これは生物学的、生理学的な反応ですから、知能の高さや賢さでは対抗できません。
なかなか、うまいことやっているものですね。
まあ実はこの話は眉唾で、そもそも脳は筋肉とは違い、何をしていても同じだけのカロリーを消費します。
実際のところレジ前にお菓子があるのは「目に入るところに甘いものがあると疲れた主婦やサラリーマンが買ってくれるし、目線の高さ的に子どもも見つけやすいから」ぐらいでしょう。
意志力はなぜ「決断」「苦手なこと」「タスク」で多く消費されるか
意志力が「決断」「苦手なこと」「煩雑なタスク」で消費されてしまうのはなぜか。
それは結局「一生懸命に何かをすると疲れて気力がなくなるし、タスクが苦手で面倒ならなおさらやりたくない」というだけの理由です。意志力という概念を用いるまでもないように思います。
ここでは暫定的に(わかりやすいので)このモデルを使いますが、意志力の本質は「疲れ」にのみあります。
ブログ執筆とか、英単語の暗記とか、テスト勉強に意志力を使う(これらを行うと疲れる)ため、ずっと集中し続けることは困難です。
先ほど「人間の脳は筋肉と同じではない」と言いましたが、休憩なしにタスクをし続けると明らかにパフォーマンスが落ちます。実験を示すまでもなく自明でしょう。
ましてやそれが苦手なこと、頭を使うこと、慎重さを要すること(決断)ならばなおさらです。
人間の脳は慣れたことを無意識的に処理できますが、逆に不慣れなものを行う時はとても無駄が多いことが知られています。これは意志力の話をする上で不可欠なので、書いておきます。
無意識でタスクを行う能力と「テトリス効果」
テトリスは得意ですか?
得意という方、それを15分やってみて、どうでしょう。疲れました?
苦手という方、15分やってみてどうでしょう。疲れました?
テトリス初心者からテトリスマスターまで様々な大学生を集め、テトリスをしてもらって脳の活性化を見る実験が行われました。
その結果分かったのは「テトリスがうまい人ほど、脳を使わずにテトリスをしていた」という驚きの、直感に反する事実でした。
我々は何かのプロについて「これだけうまいならさぞかし頭をフル回転させているのだろう、疲れるに違いない」と考えがちですが、それはむしろ逆だというのです。
よく考えると、それは当たり前ではあります。
料理に慣れていない学生はあーだこーだ考えながらレシピをググるものですが、熟練の主婦なら冷蔵庫の中身を把握し、余り物でちゃちゃっと料理を何品か作ります。
サッカーが下手な大人はボールのドリブルだけでパニックになりますが、その横をサッカー部の小学生が華麗に、フェイントまでかけてすり抜けていきます。
ショベルカー(ユンボ)を扱う現場のプロは両手両足を同時に動かしながら数ミリ単位の土削りを自由自在に行いますが、そのプロは80歳のお年寄りだったりします。
慣れているからこそ、脳はサボるのが上手になって疲れなくなるのです。このような効果(無意識にタスクを割り当てる能力)を「テトリス効果」と言います。
逆に言うと、意志力が消費されるのは「脳が慣れない作業」においてです。そういう作業をするとき、脳の電気信号の伝わり方は非常に無駄が多く、それゆえに疲れるのだと考えることができます。
ツイッターや掃除をしてしまうのは意志力を回復させるため
ですから「ブログ執筆中にツイッターを見てしまう理由」「勉強中に掃除が捗る理由」はわかったようなものです。
ズバリ、それらの作業が難解で複雑で慣れておらず、定期的に意志力(脳の働き)を回復させる必要があるためです。
私は論文を書いていたとき「論文に集中する2時間のために、わけもなくだらだらとする8時間が必要だな」と感じていたのですが、その理由をようやく言語化できて感動しています。
もし休憩を行わずに無理やりタスクに集中しようとしても、大して効率は良くならないでしょう。これを極端にすると机でうつらうつらしながら宿題をする部活帰りの中学生になります。
つまり「ツイッターをせずにブログを書く」「掃除をせずに勉強する」ことは人間にとって困難で、実は根本的な解決策は二つしかありません。
聞きますか?残酷ですよ。だから「一応、解決策」と書いたんですけどね。
- 無意識にできるレベルまで得意になる
- 寝る
このどちらかです。解決策がわかってよかったですね。
いかがでしたか?(まって、冗談だから、ブラウザバックせんといて…)
私は「書いてる時にツイッターを見てしまう」ことがほとんどなく、書き終わるまでずっと集中できる(この記事もです)のですが、その理由がやっとわかりました。
私が文章を書くのが得意で、好きだからです。
これをご覧の皆さんの中にはこうした作業が大の苦手で、5分書いてはツイッターを見たり掃除したりという人がいるでしょう。それは別に何も問題ありません。
し続けていれば、次第に慣れてきます。
あなたの脳のチカラを信じましょう。
意志力という概念に疑問が持たれ始めている
今まで意志力という単語を何の前置きもなく当然のように使ってきましたが、ここで謝罪しなければならないことがあります。
実は「意志力は有限で、何かをするたびに消費される」という考え自体が見直され始めています。
実験によると「意志力は有限だ」と信じた人間に限って、疲れた時に自制心が働かなかったのです。意志力の話を知らなかった人のほうが、自制心を働かせられました。
知っている方が損するなんて信じられませんね。
疑似科学とまでは言いませんが、私や怪しいメンタリストの言うことは真に受けないようにしましょう。意志力の話、今日知った人は全力で忘れてください。
そんな怪しい概念がなくとも、あなたの脳は慣れによって次第に作業を無意識化できます。
その日が来ると信じて皆さん、やり続けましょう!
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