安定を求めて大企業に入ったが…仕事がつまらない友人の叫び

生き方
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大企業に入った東野くんの悩み

この記事は自分のことを棚に上げて書かれています。今回、私は語り手として登場するのみであり、私の人生についてはほとんど語りません。なぜならトピックは私ではなく、私の友人・東野くん(仮名)のことだからです。

それに、私がどの規模の企業に勤めているかあなたにお伝えしてしまうと、読み手であるあなたの価値判断が狂わされてしまうでしょう。フラットな目線で彼の話を聞いてほしいのです。

ちなみにこういう記事ってたいてい「実はこの友人とは私のことなんですが…」とか「東野くんみたいにならないようにするには、こちらの転職サイトを…」みたいなオチがあるんですが、そーいうの、ないです。本当に友人の話です。フェイクは混ぜてますが。あと、この友人、ちゃんと生きてます。

理系大学院生の就活模様

東野くんはとても優秀な学生でした。学科で人気1位の研究室に入り、そこで腐らず努力し続け、学部でも大学院でも活躍し、学会に複数回出席し、学術奨励賞(学科で1人、2人しかもらえません)を受賞しています。私の記憶では彼は論文も書いていたと思います。

理系大学院を卒業する学生は圧倒的少数派であり、インターネットにもあまり情報が転がっていません。彼らの(私の?)就活模様をお伝えする必要があるでしょう。

理系の大学院は、就職の形からしてちょっと異質です。たいていの学生は「推薦応募」という形で企業に滑り込みます。これがだいたい、大学院修士1年の3月~6月です(大学院という単語に聞き覚えがなかったら「研究するところ」と読み替えてください)。

推薦応募は、大学から「うちの学生をあなたの会社によろしくお願いします」という旨の「推薦状」を書いてもらい、それをもって企業の面接を受けることで、ほとんど試験がザルになる(というところが多いとされる)…そんなWin-Winの応募形式です。

推薦応募の対義語が「一般応募」であり、要するにエントリーシートを書いて何回かのグループディスカッションや面接を経て、最終面接に受かれば晴れて合格、という形式の…おそらくあなたが想像するような就活になります。

推薦応募がWin-Winなのは、ただでさえ研究で多忙を極める学生にとって、気を揉むイベントである就活が素早く、しかも確実に終わるためにWin、優秀な人材を囲い込みたい企業にとって「一度推薦状を受け付けたら学生側からの内定辞退はほぼ絶対にない」ためにWin、という意味です。

推薦応募は大学と企業のなあなあの関係で成り立つ制度です。大学は「どうぞうちの学生をごひいきに」、企業は「こちらこそよろしくです」という意図があるため、推薦状を出してもらった後に内定を辞退するのは、大学の顔に泥を塗る行為に等しいのです。

私の研究室でも、推薦面接合格後の内定辞退はありませんでした。数年に一度、他の学科でそういうことがあったとかなかったとか、噂に聞く程度のものでした。

よって、学生にとって推薦応募は諸刃の剣でもあります。そもそも、たいていの企業は推薦応募に際し「うちの最終面接を受けたければ、おたくの大学から推薦状をもらってきてください」という制限を設けています(正確には「設けていた」ですね…今がどうなのかはわからないので)。

つまり「推薦状出す→最終面接→合格」の流れなので、実質的には面接を受ける時点で、その会社に行くことを約束しなければなりません。推薦状を出した後で他の会社を受けるのでキープします、は許されないわけです。

素早く確実に内定先が決まる一方、他の会社を見定めることは許されない、という制度なのです。これを悪習と断じる大学の先生もいました。

そうした事情があって、企業としても理系の優秀な学生を囲い込めることから、推薦応募が多用されていました。

東野くんもまた、推薦応募によって某電力会社に応募し、見事、採用を勝ち取った一人でした。お互い社会人になってもいきいき働こう、と誓い合ったのをぼんやり覚えています。

安定と腐敗の大企業生活

そんな東野くんと話せる機会が久々にあったため、近況を聞いてみました。

残業は月30時間程度で、有給も問題なく取れて、仕事は安定している、とのこと。おそらく世間一般からすれば相当に恵まれています。寮も育休制度も何もかもが充実しています。いいなあ。

東野くんの勤めている電力会社の平均勤続年数は20年前半。そこがつぶれるときには日本も一緒に終わっているような規模ですし、電力業界自体、安定性は抜群です。

電力自由化の波が来たといえど、でかい発電所を持つ会社がやはり有利ですし、再生エネルギーへの乗り換えも思ったほどには進んでいません。従来の会社がつぶれにくいのは間違いないわけです。

そんな彼が「転職しないといけないなあと思って、いろいろやってる」と口にしていました。けっこう辛そうでした。

なんで???

あなたがもし福利厚生が薄く、残業時間が多く、有給取得率も高くない会社に勤めているのであれば、真っ先にそう思うでしょう。私ももちろん、そう思いました。

いやいやいや、めちゃくちゃ安定してるし、ほぼ潰れないじゃん。このままやってればいいじゃん。

いったい何のリスクが?

彼が言うには、仕事がつまらないらしいのです。仕事がつまらないという悩み自体はありふれたものです。この世に「仕事が面白くて面白くてしょうがない!おれに仕事を渡してくれ!」みたいな人が果たして何割いるやらって話です。…いや他の国にはけっこういるらしいですが…。

こちらのデータによれば日本人のその割合は6%だそうです。よかったですね。

ですが、充実した福利厚生を差し引いて考えてもなお「転職しないといけない」と考えるのはどういうわけなのか。

彼がいまやっている業務は「減点主義」と「ペーパーワーク」の最たるもの。現場に出向くことはなく、間違いがあれば人事評価が下がるような仕組みだそうです。新しいことを考えて実践できる内容ではありません。

そうやって毎日毎日、来る日も来る日も書類を作り続け、自分の創意工夫も生かせず、周りを見れば疲れた顔の先輩社員。かれらは飲み会で会社の愚痴を一丁前に吐き出すくせに、転職も自己研鑽もしようとせず、だらだらと残業代をせしめるために会社に来続ける(データから見ると、そういう日本人のほうが多いようですが…)。

東野くんにはそれが耐えられないのだといいます。現状に、ではなく、自分が十年後にそっちのほうに行ってしまっているであろうことを、容易に予測できることが、です。

安定の大企業生活は、個人にとっての腐敗と表裏一体だったのです。

もちろん、先輩社員にはそれぞれ、守るものがあります。家のローン、車、家族、ペット、恋人…。そういった存在を加味して「仕事がつまらんので辞めます!」とは言い出しにくいのでしょう。

大企業は外から見れば華々しいのですが、やっていることは徹底した分業化であり、一人一人が受け持つ裁量は必然的にものすごく小さくなります。だから個人個人の能力はそれほど求められず、意味を考えず、言われたとおりに業務をこなせる人が出世していきます。

それは良いことでもあり、悪いことでもあります(あらゆる人間にとって最高の会社というのはこの世にありませんからね)。

ただ、大企業は、責任逃れの会議を繰り返したり、全員が全員「これいるの?」と思う書類仕事をこなしたりすることで、全員に安定した高収入と雇用を与えています。これは事実です。

私が体験したことではありません。この本(ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論)に書いてある内容です。そしておそらく、資本主義を採用する世界中の大企業で、日々見られている現象だと思います。

きっと優秀だからこその悩みではあるのでしょう。したくもない仕事に追われ、土曜日曜出勤も当たり前の方々にとっては、とてもとても贅沢な悩みかもしれません。

しかし私がこの件で感じたのは「前に進めていない感があると人って簡単に病むんだな」(正確にはうつ病ではないので「メンタルが悪くなって」ですが…)ということと「周りの環境が変わらなすぎることにも病む人がいるんだな」ということでした。

安定性を求めて電力会社に入ったはいいものの、実は東野くんは安定を取るタイプではなかったようなのです。それに気づいたのが会社に入ってからだったのが不幸でした。

しょうがないという擁護もできます。周りがほとんど大企業に推薦応募で入る中、「ベンチャー企業に行っておのれの刃を磨きます!」みたいな選択は難しいでしょう。それに、そもそもどれだけの大人が、自分のことをちゃんと分析して就活をしたのでしょうか(私も多少、耳が痛いです)。

なんにせよ、自分の才覚や意欲や好奇心や向上心を持て余し、窮屈な働き方を強制されている彼の様子は、客観的に彼がおかれている境遇を差し引いても、あまりに辛そうでした。

仕事に一生を費やすなら楽しいほうがいい

ものすごく当たり前の話なんですが、仕事には一生を費やすわけですから、楽しいほうがいいに決まっています。そんなの当たり前の話です。できれば「給料が2割減ってもここで働きます」って言えるぐらい、楽しいほうがいいです。そんな会社あるんか?この世に?

そもそも会社の給料が少なすぎる人のほうが多いんでしょうけどね。転職理由の第一位は「給料が少ない」なので…。

ただ、給料や福利厚生にさして文句もなく、それでいて仕事がつまらなくてたまらないという人は、何とかしたほうがいいんじゃないかなと(私もその一人ですが…近いうちに転職しようと思っています。棚に上げてしまってすみません)。

仕事がつまらないことは、仕事がきついこととは違います。

筋トレはきついですが、つまらなくはありません。適度なきつさは人を成長させてくれるからです。つまらない仕事は成長できないので、意欲が高い人間にとってはとてもとても、それこそ、生きている意味を見失うぐらいに過酷なものでしょう。

人は意味がないことに耐えられません。自分がいなくたって何の問題もないような仕事を「金のため…金のため…!」と週5日8時間以上耐えられる人は、そう多くないはずです。

ましてや「人生100年時代」(この言葉大嫌いなんだが誰が考えたんだ!?)、若者世代はもはや定年なんてものを信じられません。60歳で隠遁して老後はゴルフ三昧、そんな時代はとうに過ぎ去ってます。

労働が苦役以外の何物でもないなら、私たちはいったい何に希望を見出せばいいのか?

世の中で活躍している人間のほとんどは、楽しく働いています(その逆は必ずしも成り立ちませんが…)。そして、楽しく働ける職場を見つけるには、何はともあれ実際に動くことです。

普通の転職アフィリエイトサイトならここらへんで転職サイトを紹介しにかかるんでしょうけど、そういうことやってまで金が欲しくはないのでスルーします。

実際に動くというのは、東野くんのように転職活動をしたり、趣味にひたすら打ち込んだり、バーに行って新たな人との出会いを求めたり、Webサイトを作ったりすることです。とにかく何か、自分に合うもの、合う職場を見つけるために手広く行動してみる。そうやって自分の可能性を広げ続ける、信じ続ける。その場で腐らない。

東野くんと話していて、自分の心が鮮度を取り戻したのがわかりました。ああ、何かを変えたければ、実際に変わるかどうかはともかくとして、ちゃんと行動しなければいけないんだな、と。

私が転職をしようと思い至ったのは、彼と話したことがきっかけです。自分を変えたいなら行動。これだけなんです。世の原則は意外にクレイジーでシンプルなんですね。

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